マスエフェクトとRPG論
2008.02.13 15:33
Mass Effectは、”Neverwinter Nights” “Baldur’s Gate”等を開発したカナダのデベロッパ、BiowareのRPG。
2000年代のRPGの歴史は、ゲームが映画を指向していく過程においての試行錯誤の歴史と言っても過言ではない。コンピュータゲームのRPGの根幹にあるプロットは実にシンプルで、同時に作り手側に脅迫的である。本来の意味を離れて独り歩きを始めたRPGというジャンルの中では、世界がありキャラクターがおり、レベルやスキルがあり、様々なポイントを積み立てて最後のボスを倒す。どんなに厚く肉付けされようとも、骨格となるのは概ねこのようなものである。だからこそ製作者は、その世界観だとかポイントの積み立て方等に工夫を凝らすわけだが、最早それを模索すること自体が「やりたいことを探す」というよりも「やられていないことを探す」というような消去法的な手段になりつつあった。結局のところゲームは映画に漸近はするが接触はできない、そんなコンプレックスを特に大きく抱えていたジャンル、それが現代のRPGであると言える。
そこでこの、海外レビューサイトで絶賛されたMass Effectである。以下は私的レビュー。
特筆すべきは、会話周りのシステムとその演出。会話は全ての発言に選択肢が出るようになっており、選択によってその後の展開が変わる。もちろんフルボイスで進行しながらもシームレスで、カメラワークも「らしい」。映画の技法等については疎いのでそれが何故かは言葉にできないのだが、映画的な映し方だな、と思うのだ。
舞台が宇宙ということで、銀河系内を自由に移動することができる。例えば有名な馬頭星雲にある恒星系(恒星系は架空だが)へと赴いて、適当な惑星へ着陸することもできる。これは宇宙好きにはたまらない要素で、私たちがその星に降り立った時の眺めを実際に知っている星は、数えるほど、というか地球と月と火星くらいしかないわけで、あとはイラストなどから想像するしかない。それがMass Effectでは、限りなくリアルに体験できる。赤色巨星を惑星から見たときのその大きさ、暗さ、赤さ。大きさの割に気温は低かったりするのがリアルでまたいい。ゲーム的には惑星=ダンジョン、といった感じだから、1つダンジョンをクリアするだけでちょっとした宇宙旅行気分だ。
しかし、実際には全ての星に降り立てるわけではなく、一つの恒星系でどこか一つ探索できる場所があるといった具合で、他の星は説明が出るだけとなっている。また、メインストーリーに大きく関係のある星以外には殆ど生物がおらず、サブクエストはそのだだっ広い場所にある小さい基地を探して襲撃するだけなので、少々物足りない感もある(その代わりメインストーリーに関係のある星はかなり細かく作られている)。
戦闘はTPSで自分以外の2人はAIで動くのだが、これがちょっと頭悪い。スナイパーライフル持たせてる後衛向きキャラが、ズンズン前に行ってフルボッコされたりする。Follow, Wait程度の簡単な命令は出せるけど、制御しづらい。
・・・などの細かい不満はあるものの全体的な完成度は凄まじく、初めに書いたような現代のRPGに付きまとう閉塞感を打破し得る力を感じた。「ゲームはゲームに立ち戻ろう」「ゲームらしさを追及しよう」そういった風潮が顕在化しつつある中で、敢えて力技でその壁を突破してみせた一つのエポックメイキングな例として賞賛されるべき作品だと思う。